障害者総合支援法(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律)をもとに運営される障害福祉サービスは、障害者の生活や就労への支援ニーズを踏まえて3年に1度、法改正が行われます。
先日、令和6年4月からどのような点が改定されるのか、詳しく見ていきましたが、その最新として、令和6年2月6日(火)に報酬改定の概要が厚生労働省の障害福祉サービス等報酬改定検討チームより、「処遇改善加算」が一本化されることが発表されました。
今回は「処遇改善加算」がどのように変わったのか、詳しく見ていきたいと思います。
■処遇改善加算とは?
処遇改善加算は職員の賃金向上のための加算で、正式名称は「福祉・介護職員処遇改善加算」です。職場環境の改善やキャリアアップの仕組みづくりなどの要件を満たすと算定することができ、処遇改善加算にはⅠ~Ⅲが存在します。
また処遇改善加算とは別に「特定処遇改善加算(福祉・介護職員等特定処遇改善加算)」「ベースアップ等支援加算(福祉・介護職員等ベースアップ等支援加算)」という加算も存在します。いずれも職員の賃金向上のための加算です。
【処遇改善加算の流れ】
処遇改善加算は福祉・介護業界の賃金向上を目的とした「福祉・介護人材の処遇改善助成金事業」として始まりました。その後「福祉・介護職員処遇改善加算」として報酬に組み込まれ、「福祉・介護職員等特定処遇改善加算」「ベースアップ等支援加算」が創設されてきました。
令和6年度報酬改定では、福祉・介護職員等の確保に向けて、福祉・介護職員等の処遇改善のための措置をできるだけ多くの事業所に活用されるよう推進する観点から、「福祉・介護職員処遇改善加算」「福祉・介護職員等特定処遇改善加算」「福祉・介護職員等ベースアップ等支援加算」について、現行の各加算・各区分の要件及び加算率を組み合わせた4段階の「福祉・介護職員等処遇改善加算」に一本化するとともに、新たに追加措置する処遇改善分を活用し、加算率を引き上げることとなりました。
【条件】
- 新加算は、加算・賃金改善額の職種間配分ルールを統一(福祉‧介護職員への配分を基本とし、特に経験‧技能のある職員に重点的に配分することとするが、事務所内で柔軟な配分を認める)。
- 新加算のいずれの区分を取得している事業所においても、新加算Ⅳの加算額の1/2以上を月額賃金の改善に充てること
【加算率】
共同生活援助 |
Ⅰ |
Ⅱ |
Ⅲ |
Ⅳ |
---|---|---|---|---|
介護サービス包括型 |
14.7% |
14.4% |
12.8% |
10.5% |
日中サービス支援型 |
||||
外部サービス利用型 |
21.1% |
20.8% |
19.2% |
15.2% |
【対象事業者】
居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、重度障害者等包括支援、療養介護、生活介護、短期入所、施設入所支援、共同生活援助、自立訓練(機能訓練・生活訓練)、就労移行支援、就労継続支援A型、就労継続支援B型、就労定着支援、就労選択支援、自立生活援助、児童発達支援、放課後等デイサービス、居宅訪問型児童発達支援、保育所等訪問支援、福祉型障害児入所施設、医療型障害児入所施設
※「就労定着⽀援」「⾃⽴⽣活援助」「就労選択⽀援」が新たに処遇改善加算の対象となりましたが、「地域相談⽀援」「計画相談⽀援」「障害児相談⽀援」については引き続き処遇改善加算の対象外です。
参照:厚生労働省 令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要(案)
■いつから減算が適用される?
新加算は令和6年6⽉適用開始です。令和6年4⽉、5⽉は既存の処遇改善加算での対応となりますので、気を付けましょう。
詳しくは、指定権者からの連絡をご確認ください。
【経過措置】
- 令和6年度末まで経過措置有り
■職場環境等要件の見直し(令和7年度)
障害福祉分野の⼈材確保に向け、賃金改善を除く職場環境等の改善をを定めているのが「職場環境等要件」です。
現⾏の加算は、処遇改善加算で24項⽬中1つ以上、特定処遇改善加算で6区分それぞれ1つ以上の取り組みが求められています。
新しい処遇改善加算の職場環境等要件については、取り組み項⽬数を増やすことや⽣産性向上のための業務改善の取り組み項目の拡充が検討されていますが、実際の⾒直しは令和7年度になる見込みです。
■障害者総合支援法とは?
障害福祉事業は、法律に則って、行政の認可のもと行う事業です。
その基となる障害者総合支援法は、「地域社会における共生の実現に向けて新たな障害保健福祉施策を講ずるための関係法律の整備に関する法律」の整備により2013年に制定されました。
【目的・基本理念】
目的規定において、「自立」という表現に代わり「基本的人権を享有する個人としての尊厳」と明記され、障害者総合支援法の目的の実現のため、障害福祉サービスよる支援に加えて、地域生活支援事業その他の必要な支援を総合的に行う。
■まとめ
いかがでしたでしょうか?今回は令和6年度より一本化される「処遇改善加算」について詳しく見てきました。
福祉・介護職員の処遇を改善するため、今までいくつもの加算が創設されてきましたが、事務作業の煩雑さ、制度の複雑さ、職種間の賃金バランス、利用者負担などを理由に取得しない事業所が一定数有り、特に特定処遇改善加算の取得率は7割にとどまっています。そのため令和6年度の報酬改定ではその煩雑さを軽減できるよう、仕組みが一本化されております。
職員の処遇を改善するための加算となっておりますので、事業所としては取得すべき加算ですね!令和6年6月からしっかりと取得できるよう、事業所として準備を進めていきましょう。
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